男子サッカー日本代表キャプテンを務めている、長谷部誠選手の本を読みました。いつもテレビで見るときは、ソツのない姿勢やコメントなどから、周囲から慕われる生徒会長のような印象を持っています。
そんな長谷部選手の本が、「心を整える」というタイトルになった経緯はまえがきでこのように書かれていました。
僕のキーワードは「心」です。僕は「心」を大切にしています。スポーツ業界などでよく言われる「メンタル」という言葉で言い換えてもいいです。ただ、よく「メンタルを強くしよう」「心が折れちゃダメだ」「心を磨け」などと言われることがありますが、僕の感覚はちょっと違います。
僕にとっての「心」は、車で言うところの「エンジン」でありピアノで言うところの「弦」であり、テニスで言うところの「ガット」なのです。??? という感じかもしれませんが、「メンタルを強くする」と言うよりも、「調整する」「調律する」と言った方が適している感覚です。車のエンジンに油をさし、ピアノの弦を調律する、そして、テニスのガットを調整する。そんな感覚を心に対して持っているのです。
つまりは「心をメンテナンスする」「心を整える」ということ。
※Kindleにページ数の記載がなかったため引用ページは記載できていません。以下引用も同様です。
本を読んだ後も印象は変わりませんでした。しかし、生徒会長を務めあげるための努力を惜しみなくし、常にセルフコントロールをされている、本当にストイックな方なんだと、驚きました。
なぜそこまでセルフコントロールに力を入れているのかというと、「どんな試合でも一定以上のパフォーマンスができるから」。それはなぜかというと、「自分が弱い人間だという自覚があるから」」だと話しています。そして、キャプテンとしてチームをまとめるには、その時の状況を見極め必要な行動をして他者をコントロールすること。容易ではないが、それを可能にするにはまず自分をコントロール出来ていなければならない、ということも本書を読んで感じました。
以下、私のハイライトです。
整理整頓は心の掃除に通じる。ドイツには「整理整頓は、人生の半分である」ということわざがある。 日頃から整理整頓を心がけていれば、それが生活や仕事に規律や秩序をもたらす。だから整理整頓は人生の半分と言えるくらい大切なんだ、という意味
…きれいになった部屋を見たら、誰だって心が落ち着く。僕は心がもやもやしたときこそ、身体を動かして整理整頓をしている。心の掃除もかねて
過度な自意識は必要ない。大きかったのは「鈍感」になれたこと
…周囲の人は自分が意識しているよりもはるかに、僕のことを見ていないことに気がついた。
マイナス発言は自分を後退させる。愚痴で憂さ晴らしをするのは自分の問題点と向き合うことから逃げるのと同じ。ゆえに、逆に愚痴を言わないように心がければ、自ずと問題点と向き合えるようにもなるのだ。
…心を正しく整えるためにも愚痴は必要ない。
恨み貯金はしない。悔しいことがあったときは、なるべく早く消化するように心がけるようになった
何かリフレッシュして、次に向かってリスタートした方がはるかに建設的だ。
集団のバランスや空気を整える。変化を受け入れなければ進化することはできない。
組織の穴を埋める。だからこそ、レベルの高いチームのなかで生き残り、先発メンバーに名を連ねるためには、何か人と違うストロングポイントを示さなければならない。 僕にとってのそれは、「組織に足りないものを補う」ことだ。
…会社でも組織のベクトルと個人のベクトルを一致させられれば、どんな仕事でも自分を活かすことができるのではないか。チームの穴や業界の穴を分析し、誰よりも早くその穴を埋めていく。そうすれば、誰もが気がついてくれるわけじゃないけれど、必ず見てくれる人はいる。
競争は、自分の栄養になる。競争は自分を進化させてくれる。
…競争は成長するための栄養のようなもの。楽しいことばかりじゃなく、つらいこともあるけれど、逃げずに向き合い続ければ身体の隅々までその栄養が行き渡る。
常に正々堂々と勝負する。普段から正々堂々と勝負していれば、たとえまわりから陰口が聞こえてきたとしても、まったく気にならない。逆にそういうことを言う人をかわいそうだなと感じる。
運とは口説くもの。サボっていたら、運なんて来るわけがない。…ギリギリのところで運が味方してくれるのは、ただ運が良かったわけではなく、それにふさわしい準備を僕がしていたはずだから。
逆に、「運が悪かった」とも思わない。結果が悪かったときには、「運」を味方につける努力が足りなかったのだと思っている
「スペイン語で運(la suerte)は女性名詞。だから、アルゼンチンの人たちは『運を女性のように口説きなさい』と言うんだ。何も努力しないで振り向いてくれる女性なんていないだろ? それと同じで、運もこちらが必死に口説こうとしないと振り向いてくれないんだ
努力や我慢はひけらかさない。努力や我慢は秘密にすべきだ。なぜなら、周囲からの尊敬や同情は自分の心のなかに甘えを呼び込んでしまうから。
…そういう同情や心配は心を乱す雑音になってしまう、というのが僕の考え方だ。 「痛いけど、頑張ります」と答えるのは、 『100%のプレーができないと思いますけど、許してくださいね』 と言い逃れをしているようだ。
読書は自分の考えを進化させてくれる。「惚れて通えば 千里も一里」 好きなものは時間を超越す
指揮官の立場を想像する。「人の上に立つ人間は、孤独である」ということだ
変化に対応する。「考えは生き物。常に変化していい」
脱皮しない蛇は破滅する。人間もまったく同じだ。古い考えの皮をいつまでもかぶっていれば、やがて内側から腐っていき、成長することなどできないどころか、死んでしまう。常に新しく生きていくために、わたしたちは考えを新陳代謝させていかなくてはならないのだ。
指導者と向き合う。どんな指導者にもそれぞれの良さがある。それを引き出せるかどうかは、教えられる側の心構えにもかかっている。
正論を振りかざさない。「直にして礼なければ即ち絞す」 正義感が強すぎて、真面目すぎると、かえって周囲を絞めつけてしまう、という意味だ
長谷部流セルフコントロール術を惜しみなく語ってくれていて、すごく参考になりました。
最近発売された、オリックスの金子投手の本も以前読みましたが、考えた方が良い意味で常識に縛られすぎず、「そんな考え方もありなんだ」と、大変楽しみながら読みました。
スポーツ選手の本、もっと読みたいですね。